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2012年6月19日 (火)

恵む海の秘密

Imgs3014
EOS-1DsMk3 EF300mmF2.8LIS2  1/8000sec F5.0 RAW DPP3

「鰯が浜に打ち上がる季節、猫たちが砂浜を歩くよ」

漁師の爺さんに そう教わった。
今年も約束の季節に、今年も砂浜を彷徨う彼女たちがいた。

普段は人気を気にし、夕方以降にしか浜に出ない彼女らが、
今日は何故だか人目も来にせず、何度も何度も砂浜に現れる。

「あいつら食意地がはってるからな。今年は特に鰯の数が多いから嬉しいんだろう。」

網を繕いながら爺さんは笑った。そして、私もそう思っていた。

しかし、今日の彼女たちの様子は、いつもとは明らかに違っていた。

漂着物を探しながらも、視線は丘の上の一点へと泳ぎ、
せわしなく丘へ戻れば、何かを待ち侘びるような忍耐の表情。
上空では、猛禽類がそわそわと不気味な旋回を続けている。

「やはりそうか!」

夜の帳が降りるのを待ちわびて、丘の廃船に隠した愛し子を呼ぶ母猫の声。
それを合図に、狭小空間からヨチヨチと授乳に現れる子猫たち。

自分の為にではなく、明日も愛し子の為に命の糧を求め彷徨う母猫たち。

私は知ってしまった。
誰も知らない、砂浜の秘密を。

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